遺産分割協議とは、遺産を相談して分割するために行う、相続人同士の話し合いのことです。
難しい名前がついていますが、特別やり方が決まっている訳ではありません。
しかし、正しく開催されなければ協議は無効になってしまいます。
また、お金が絡むことなので、スムーズに終わるとは限りません。
そこでこの記事では、遺産分割協議を問題なく開催できるように、ルールや進め方・遺産分割協議書の作成方法などを詳しく解説していきます。
遺産分割協議についての疑問点を全て解決して、トラブルなく遺産を相続できるようにしましょう。
遺産分割協議とは、実際にはどういった話し合いなのでしょうか。
まずは、遺産分割協議の概要と必要ない場合についての解説をします。
遺産分割協議とは、故人の遺産を相談して分割するために行う、相続人同士での話し合いのことです。
亡くなった人が遺言書を作成しておらず、遺った遺産をどのように分割するか話し合うときに行います。
「遺産分割協議」と、難しい名前がついていますが、特別決まった方式はありません。
ただしこうした方が良いということはあり、「相続人が全員集まる」「遺産分割の結果を書類で残す」の2点は守った方が良いでしょう。
開催の時期についても、特に決まりはなく、遺産相続を開始してからであれば自由に決めることができます。
遺産分割協議が必要ない場合は、次のうちどれか一つでも当てはまる場合です。
以下で解説していきます。
相続人が一人だけの場合は、遺産をすべて一人で相続するので、遺産分割協議は不要です。
遺産相続の時に、戸籍などの書類で相続人が一人であることを確認されます。
法的に、相続人が一人であることが確認できれば、遺産分割協議はしなくていいのです。
被相続人の遺言書があり、その遺言書通りに遺産相続をする場合には、遺産分割協議は不要です。
ただし、遺言書に記載のない財産などがあった場合、その分割方法については遺産分割協議で解決しなければなりません。
遺言書に全財産の分割方法が示されていて、相続人から異議が出なければ遺産分割協議なしに相続できます。
遺産が現金と預金だけの場合で取り分にも争いがない場合には、遺産分割協議は必ずしも必要ありません。
預金は、金融機関で手続きをすれば、相続人全員の著名で引き出すことができます。
引き出した預金と現金を合わせて、相続人間で分割するので、法的な手続きは発生せず、遺産分割協議をしなくても遺産分割ができるのです。
ただし、相続人間でトラブルになりそうな場合は、遺産分割協議の開催をおすすめします。
遺産分割協議を行う前に、必ず以下4つのポイントを確認して、スムーズに会議を進めましょう。
順番に解説していきます。
相続人の洗い出しと、その相続人に相続意思があるかどうかをあらかじめ確認しておきましょう。
相続の意思がなく、相続権を放棄した遺族は、遺産分割協議に参加しなくてよくなります。
しかし、本来参加すべき相続人が参加せず、非参加相続人の合意もないような協議内容だと、遺産分割協議自体が無効になってしまうので気を付けましょう。
相続人が誰なのか、相続意思があるのかどうか、トラブル回避のためにも確認は必須です。
協議において話し合うべき、遺産の相続内容について原案を考えておきましょう。
遺産分割協議は、相続人全員の合意があれば、自由な内容で決定できます。
あらかじめ原案を決めておけば、すべての財産について協議する必要はありません。
原案のない、その他の遺産分割の話し合いだけで済むのでスムーズに進行できます。
そのために、遺産の相続内容の原案を考えておくのが有効なのです。
遺言書があるなら、まずは遺言内容の確認から始めましょう。
その遺言内容に遺産すべての分割方法が記されていて、その分割方法にのっとる場合は、遺産分割協議を行わなくて済みます。
遺品整理の際に、大切なものがしまってある場所で、遺言書を発見できれば問題はありません。
しかし、見つからない場合には、公証役場で当人に作成履歴がないか検索してもらいましょう。
遺産分割協議において必須ではありませんが、不動産などの相続財産を算定しておきましょう。
あらかじめ相続財産の算定をしておけば、万一協議で揉めた場合、客観的に分割割合を計算できます。
現金や有価証券など、すぐに価値のわかるものはいいのですが、不動産は売ってみないと価値がわかりません。
不動産などの遺産は見積りなどで金額を明確にしておきましょう。
遺産分割協議を行うにあたって確認しておいてほしい注意点は以下の6つです。
詳しく説明しますので、順に見ていきましょう。
遺産相続協議の本題にあたる部分は、相続財産の分割方法です。
「どの財産を誰にどれだけ分割するのか」を明確にしておきましょう。
現金や預金、不動産、有価証券など換金性の高いものは比較的分割しやすいです。
しかし、骨董品、貴金属、自動車など、価値が高いものの、相続についてはしっかりとした話し合いが必要になります。
後から未分割の財産があると、改めて協議をし、遺産分割協議書の書き直しもしなくてはならないので、財産すべての分割を心がけましょう。
現金や預貯金の相続を決めるとき、相続金額は割合で算出するようにしましょう。
なぜなら、被相続人の死後でも、未払いの家賃や生活費などで、現金や預貯金が変動する可能性があるからです。
もし「相続人Aに1,200万円、相続人Bに800万円」と具体的な金額を明記してしまうと、後で計算が合わず、トラブルのもとになります。
たとえば、「相続人Aに○○銀行預金の6割、相続人Bに○○銀行預金の4割」というように、割合で決めておきましょう。
すべての未払い金を払い終えた後で、滞りなく相続できるので、割合での遺産分割をおすすめします。
遺産分割協議の決定には、時効がありません。
遺産分割協議で一度決まったら、基本的には個人の判断で変更ができないのです。
必要であれば、相続人の合意で財産の受け渡しは可能ではあります。
しかし、以降の財産受け渡しには、贈与税や譲与所得税が課せられるため、相続とは関係のない譲渡とみなされるのです。
遺産分割会議以降の分割変更は、余分な税金を払わないといけなくなるので、遺産分割協議での決定は、慎重に行う必要があります。
遺産分割協議を行う際は、その議事録として、遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書は、遺産分割協議が確実に行われ、分割内容を決定したという法的な証明になります。
作成しておけば、急な撤回や変更ができなくなり、その後の遺産相続手続きを滞りなく進められます。
作成方法として決められているのは自筆の署名と印鑑だけです。
それほど作成が難しい書類ではないので、後からトラブルが起きないように確実に作成しておきましょう。
遺産分割協議は、対面で行うのが基本となっています。
顔を付け合わせて話したほうがまとまりやすく、遺産分割協議書には、手書きの署名と印鑑が必要になるからです。
ただし、距離が遠いや病気で動けないなど、不慮の理由でどうしても難しい場合は、電話でまとめることもできます。
この場合、あらかじめ取り決めておいた分割方法を共有しておき、後から遺産分割協議書に著名と印鑑をするという流れです。
この方法だと、遺産分割協議書に間違いがあると改めて初めからやり直す必要があるため、可能ならば、対面での遺産分割会議をおすすめします。
遺産の中に賃貸物件がある場合は、被相続人の死後も賃料は発生し続けます。
遺産分割協議までは、相続人全員が法定相続分にしたがって賃料支払義務がある状態になります。
しかし、被相続人の口座から賃料は解約月まで引き落とされるのが通常であるため、その点はそれほど問題となりません。ただ最終的には、遺産分割協議においては話し合う必要があるのです。
不動産収入の場合も同じ考え方で、死亡後に発生した不動産収入は、遺産分割協議が決まるまでは相続人の共有財産となるため、遺産分割協議でしっかりと話し合う必要があります。
では、遺産分割協議書の作成方法を確認していきましょう。
遺産分割協議書は、決定した事項を記載していき、法的効力を持たせるための文書です。
例えるなら、議事録のようなものになります。
本文に関しては、手書きでもパソコンの打ち出しでもどちらでも構いませんが、最後の著名・住所だけは必ず手書きで記載するのがルールです。
ここでは作成手順を紹介していきますので、順に見ていきましょう。
まずは、「遺産分割協議書」と一目でわかるようなタイトルを付けましょう。
後々、法的な証明をする場合に、わかりやすくするためです。
特に規定はありませんが、法的効果を持たせるため、遺産分割協議書の文言は入っていたほうがいいでしょう。
このほかに、故人の名前を入れてもいいでしょう。
序文として、誰の遺産を誰が相続人として分割したかを明記しておきましょう。
この序文で、相続人には誰がいるのかを明記しておけば、第三者から見たときに把握しやすい文章になります。
そのためここには、相続人の名前を全員分記しておきましょう。
下記にて例を紹介します。
例:(被相続人名前)(○○○○年○○月○○日逝去)の遺産について、共同相続人である(相続人A名前)、(相続人B名前)及び(相続人C名前)は、協議の結果、次のように遺産を分割し、取得することを決定した
協議の結果、誰がどの遺産を何割相続するのか明確に記載します。
後から確認したとき、どの遺産なのか確実に特定できるよう、詳細に記載しましょう。
たとえば、預金であれば、銀行名、支店、口座番号まで、不動産については、登記簿謄本を参考にしながら正確に記載します。
下記にて例を紹介します。
例:
1.(相続人A名前)が取得する財産 |
(1)土地:(土地の住所)○○平方メートル |
(2)預貯金:○○銀行○○支店 口座番号xxxxxxx 口座預金の6割 |
(3)借入金:○○銀行からの借入金 借入金のすべて |
… |
これに続いて、相続人分の項目を記入していきましょう。
遺産分割協議を行った日付を明確に記載しましょう。
日付を記載することで、遺産分割協議をその日に行ったという証明になります。
下記にて例を紹介します。
例:20XX年X月X日
例:令和YY年Y月Y日
このときの日付は西暦か元号から記載してください。
相続人全員の名前・住所を手書きで記載しましょう。
遺産分割協議書に法的な効力を持たせるために必要なので、必ず手書きで記載します。
その後、名前の後ろに実印を押してください。
下記にて例を紹介します。また、各相続人の印鑑証明書も必ず取っておきましょう。
例:
(相続人A住所※手書き) (相続人A名前※手書き) (印鑑) |
… |
必ず手書きで書くようにしましょう。
遺産に土地や不動産が含まれている場合は、相続方法が以下の4パターンから選択できます。
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
現物分割は不動産をそのまま分割する方法です。
分筆登記のようにひとまとまりだった不動産に線引きをし、2つ以上の登記に分けることで相続します。
または、不動産には線引きせず、土地と借地権での分割相続も可能です。
線引きによりシンプルに分けることができますが、あまり現実的ではないでしょう。
代償分割とは、価額賠償とも呼ばれる方法です。
相続人の一人が不動産を相続し、他の相続人には、相続すべき不動産の持分相当額を金銭で支払う相続方法です。
このためには、不動産の算定金額が必要となるため、この相続方法を検討している場合は、あらかじめ不動産の算定をしておきましょう。
この方法であれば、公平な遺産分割ができますが、不動産を相続した人は、その分金銭を払う必要があります。
このため、不動産を相続する人に金銭的な余裕がある場合に選べる方法と言えます。
換価分割は不動産の一部、またはすべてを売却し、現金に換えて相続する方法です。
売却後の相続手続きは現金相続と変わらないため、法的な事務手続きは不要になります。
金銭で正確な分割相続ができるため、この方法を取ることが多いです。
ただし、不動産がすぐに売れるとは限らないため、遺産分割が長期化してしまうことがあります。
共有分割は、不動産をあえて分割せず、不動産を共有する方法です。
不動産を各相続人の割合で共有しますが、この方法で分割した不動産は、共有者全員の承認がなければ、売却・建築・取り壊しができなくなります。
不動産所有者の決定を先延ばしにする結果にしかなりませんので、あまりおすすめはしません。
どうしても話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停をします。
遺産分割調停とは、相続人同士が調停委員を立て、お互いの相続分を裁判長に主張しあう調停です。
遺産分割調停においても話がまとまらない場合には、審判が行われ、審判でも決着がつかない場合は、裁判へと移行します。
遺産分割協議について紹介しました。
遺産分割協議が必要かどうかは、遺言書のあるかや、どのような財産が遺っているかによります。
遺産分割会議を執り行う前に、しっかりリサーチしておけばスムーズに進行できるでしょう。
また、遺産分割会議を執り行う場合には、後々トラブルにならないように、遺産分割会議書の作成をおすすめします。