遺産分割協議(民法907条1項)とは、相続人が共有している遺産を、各相続人に具体的に分ける話し合いのことを言います。
そもそも、ある人(被相続人)が死亡した場合、相続が開始され(882条)、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります(896条本文)。ここで、相続人が複数いる場合には、遺産は共同相続人の共有に属することになります(898条)。そうすると、遺産分割協議前においては、遺産は全て共同相続人の共有になっていますので、例えば、遺産として、預貯金や持ち家、株式等があったとしても、それらは全て共同相続人の共有状態にあることになります。
この遺産の共有状態から、各相続人に遺産を分けてそれぞれ単独所有にする手続きが遺産分割協議というものです。
遺産分割協議は、その名の通り、共同相続人間の協議によって行うことができます。協議の方法等に制限はありませんが、協議がまとまった場合には、その合意内容を「遺産分割協議書」という形で書面に残すことをおすすめします。もちろん、遺産分割協議は口頭によっても成立しますが、
①どのように遺産を分割したか、後日の証拠となる
②不動産の登記を移転する場合や、預貯金の解約、株式の名義変更等で必要になる
③相続税が課税される場合に、誰がいくら負担するのかを決める資料になる
といった点から、遺産分割協議書をつくることが望ましいです。
遺産分割協議書の書式についても特に制限はありませんが、以下の点には注意が必要です。
まず、分割する遺産を特定する必要があります。その方法としては、例えば不動産であれば、登記の表示を書く、預貯金であれば、銀行名、預貯金の口座のある支店名、預金の種類と口座番号、金額を書くことによって特定するのがよいでしょう。次に、日付、名前を記入しましょう。名前は直筆で書いた方が好ましいです。
最後に、実印を押印する必要があります。なお、遺産分割協議書を提出する場合には、印鑑証明書の提出も求められることが多いです。