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【遺産分割協議】口頭で合意に効力はある?トラブルを避けるには

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相続が開始し、被相続人の遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。

この遺産分割協議の大前提として、相続人が誰かをまず確定させなければなりません。

なぜなら、相続人全員でしなかった遺産分割は無効になるからです。

しかし、相続人の範囲が容易にわかり、いつも顔を合わせる家族だけであった場合、わざわざ協議の内容を文書に残す必要はあるのでしょうか?

あります。相続に関する合意は、たとえ相続人がいつも顔を合わせる家族だけの場合であっても、必ず遺産分割協議書という形で文書に残しておくべきです。

遺産分割協議書とは

そもそも、遺産分割協議書とはなんでしょうか?

被相続人の財産について、誰がどの財産をどれだけ相続するのか、相続人全員で話し合い、確定する話合いを遺産分割協議といい、全相続人で合意した内容を書面にしたものを遺産分割協議書と言います。

実は、遺産分割協議は、口頭での合意でも有効とされています。したがって、法的にいえば、遺産分割協議書は必ず作成しなければならないものではないのです。

しかし、それでも遺産分割協議書を作成しておいた方が良いことは間違いありません。それは,口頭の合意ではその内容の立証が極めて難しくなるためです。

ここでは、もし遺産分割協議書を作成しなかった場合にどのような不都合がおきるのかを見ていきます。

遺言書がある場合には不要?

遺言書がある場合、遺産分割協議は不要なのでしょうか?

遺言書がある場合には、原則としては遺言書の内容通りに遺産が分配されます。

しかし、全相続人(遺言により利害関係者となったものを含む)の同意があれば遺言の内容と異なった遺産分割協議であっても有効となるとされています。

この場合は、遺言書があったとしても遺産分割協議書を残しておくべきといえます。

また、たとえ遺言書があっても、内容によっては単に相続する割合だけが記載されているものや遺産が複数あり具体的に示されておらず、相続人の話し合いに委ねているものもあります。

この場合には遺産分割協議によって相続分を決定しないと、具体的な相続はできません。

このような場合は遺言の趣旨に反しない範囲で具体的相続分を決めるための遺産分割協議が必要であり、協議内容を残しておくべきでしょう。

遺産に不動産などがある場合

不動産を取得した場合は、法務局へ所有権移転登記を申請し、不動産を相続人名義に変更することとなります。

遺産分割協議書はこの相続登記手続きにおいて添付書類として必要となります。

法定相続人が一人、又は法定相続分で相続をする場合には遺産分割協議書は不要ですが、遺産分割協議による取得の場合は、相続人全員の署名と実印の捺印のある遺産分割協議書が必要となり、原本を提出し、手続きが終われば原本は返却されます。

自動車の場合でも、相続による自動車の名義変更には、遺産分割協議書が必要とされています。

ただし、取得する車が100万円以下であることを確認できる査定証又は査定価格を確認できる資料等があれば、遺産分割協議書の代わりに使用できる「遺産分割協議成立申立書」という書式が別途あります。

遺産分割協議成立申立書の場合には、署名捺印やその他の添付書類も自動車の取得者だけで手続きは可能となります。

認知症等の問題

遺産分割協議書には、相続人全員の署名と捺印が必要になります。

しかし、相続人の中に認知症の方や未成年者がいる場合には、判断能力が乏しい可能性があるため、そのまま遺産分割協議をしてしまうと、後から後見人等により取り消されてしまう可能性があります。

そこで、認知症で判断能力に乏しいと思われる方がいる場合には、申し立てにより家庭裁判所によって決定・選任された成年後見人が代理人となります。後見人の申し立ての際、家庭裁判所から「遺産分割協議書(案)」が求められることが多いようです。

これは認知症の方が明らかに不利となる遺産分割協議を原則として認めることはできないからです。

後見人をつけるには期間も費用もかかりますので、後見人が出席した遺産分割協議においては、遺産分割協議書に代理人としての署名捺印を受けておくべきです。

また、遺産分割協議において未成年者には代理人を立てなければなりません。

通常は未成年者の代理人としては親となりますが、相続人に親が含まれている場合はその未成年の親は代理人になれません。

このような場合には家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てることになります。

遺産分割協議書の効果

相続が開始し、相続人が一人の場合についてはあえて協議書を残す必要もありませんが、法定相続分により兄弟姉妹などで取得する場合でも遺産分割協議書は作成すべきでしょうか?

不動産があり、協議書を作成しない場合

先に、不動産を法定相続分で相続をする場合には遺産分割協議書は不要と述べました。

例えば、法定相続人が被相続人の子2人(兄弟)の場合であれば、法定相続分は兄2分の1、弟2分の1です。

被相続人の不動産を、この法定相続分のとおりに「共有名義」で登記する場合に限り、遺産分割協議書は不要ということです。

しかし、共有名義での登記は、後になってその不動産を売却したり、金銭借入れの担保に使用するには、共有者の全員で手続きをしなければなりません。

遺産分割協議書の作成の手間と後々の手続きの手間を比べると、前者のほうが圧倒的に楽なので、やはり遺産分割協議書を作っておくほうが良いでしょう。

トラブル回避効果

遺産分割協議で「法定相続分で遺産を相続しよう」と全相続人で合意し、各人が納得している場合には、特に協議書の作成は必要ないといえそうです。しかし、その内容をしっかりと書面に残しておかなければ、後々相続人の誰かが言い分を変えてきたときに合意内容を立証できず非常にやっかいなのです。

しかし、口頭における遺産分割協議であっても、一旦決めた内容の変更は簡単にはできません。

法律上は再分割可能ですが、税務上は相続ではなく、贈与とみなされる場合があります。

贈与税は相続税とは計算方法が大きく異なり、税率は高くなります。

「やっぱりこの財産分割は納得できない」などのトラブルが後で発生しないためにも、遺産分割協議で決めた内容や実施日を書き留め、全相続人が署名と捺印をして残す「遺産分割協議書」があればお互いに安心できると言えます。

まとめ

いかがでしたか?

遺産分割協議書について、まとめますと

  • 遺産分割協議書は口頭での合意でも有効とされるが、それでも作成した方が良い
  • 遺言書があっても、遺産分割協議が必要となる場合がある
  • 不動産などの相続には遺産分割協議書が必要となる
  • 認知症や未成年の問題があれば少なくとも遺産分割協議書(案)は必須

となります。

個別具体的な問題は,弁護士にご相談ください。